ひとりの夜、こっそり即席ラーメン。

コロナで九州巡りを極めることなく、再び関東で暮らすこととなった我が家。

夫は歓送迎会多数により、私のひとり晩ごはんの回数が増えてきた。

いつもは1週間分の作り置きを5〜6種類作って、日によってメインと盛り付けを変えるパターンだから、そんなに夕飯の支度が大変だと思ったことがない。けれど、やっぱり自分が作るご飯ばかりだと飽きるし、結婚をしてから友だちと飲みに行くということもめっきり減ったから、たまにはいつもの暮らしから脱線して独身時代のような不摂生をしたくなるときがある。

そんなとき、私の場合はなんでだかわからないけど、一人の夜にこっそり食べたくなるのが「即席ラーメン」だ。

冷蔵庫にはちゃんと調理したおいしいおかずだって、サラダだって何種類もあるのに、どうしてもそんな気分になれない。無性に不摂生をしたくなる。しかも私の場合は小麦を食べると頭痛と倦怠感に襲われるとわかっているのに、それでもリスクを冒して食べたくなる。

そんな衝動に襲われたある日、頭の中は完全に豚骨ラーメンだった。

豚骨といえば、九州の味「うまかっちゃん」。一人でラーメン屋へはいけないので、即席ラーメンにした。

久しぶりに手に取ったそれは、昔と比べるとなんだか小さくなった気もするけどこれも時代の流れ。

夫が飲み会の日にこっそり決行した。

麺を茹でてスープを作り、野菜も気持ちトッピングして美味しく出来上がった「うまかっちゃん」を食べ、満たされた。

さぁここからが勝負。

江戸時代から約200年ほど続いた代々お医者さん家系に生まれた夫は、もはや遺伝子レベルの健康オタク(しかも無意識)。即席ラーメンなんか一人暮らしをしていた10代20代のときでさえ食べることなく、ちゃんとタンパク質と野菜を意識して自炊をしていたような人だ。それを聞いて、家庭環境って本当に大事だなと改めて思った。

小麦を食べると体調が悪くなる私を案じ、そんな時には十割蕎麦を茹でてくれるというやさしい夫である。

そんなやさしい夫にバレないよう、「うまかっちゃん」堪能後に跡形なく始末をするのが今回のミッションだ。いつも完全犯罪が失敗に終わるので、今回はかなり計画を練った。

その1)まずは袋類を一つ残らず片付けて、ゴミ袋の奥底へ隠す。

その2)食べ終わったスープの残りを排水口に流して食器と鍋を洗い、片付ける。

その3)シンクを磨いて排水溝のネットも処分。これが大事だ。残った数センチの麺によって、何度もバレたことがある。

これでもう完璧。

今回は絶対にバレない、自信があった。

見事、跡形もなく即席ラーメンの残骸は消え、完全犯罪が初めて達成されるときを迎えた。

そして、夜遅くにほろ酔いの夫が帰宅。楽しそうに飲み会の出来事を話してくれて、今日も1日が平和に、無事終わると思われた。

だがしかし。

やっぱりまだ甘かった。買い物用のバッグにレシートを入れっぱなしにしてあり、ほろ酔い状態にもかかわらずシュレッダーにかけようとしてくれちゃった夫がそれを見て、ふざけて大袈裟に目を見開いた。

バレた。「うまかっちゃん」がバレた。

遺伝子レベルの健康オタクくらいになると、野生の本能、第六感という特殊能力が備わっているのだと思う。人間も動物だから「直感」はだいたい当たる。新参者の健康オタク(私)は到底敵わない。

もう完全犯罪を目指すのはやめて、堂々と食べよう。いや、九州を去る前に一緒に豚骨ラーメンを食べに行こう、そう思いながら完全犯罪失敗の1日が終わり、眠りについた。

それではまた〜

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